2021年度 理事長所信
佐藤 聖悟
2019年5月1日 「平成」が終わりを告げ、「令和」という新時代が幕を開けました。新たなスタートを順調に切っていくと思われた矢先、2019年11月末に発生した新型コロナウイルス感染症による世界的なパンデミックが起こり、世界経済は混沌の渦に巻き込まれ、我が国日本においても史上初めてとなる緊急事態宣言が発出されました。2020年7月に開幕が予定されていた東京オリンピックは、前代未聞の1年延期という対応がなされ、国民は人と会うことさえままならない、完全隔離の自宅自粛制限が行われたのです。わがまち日立においても、地域経済、特に飲食業や観光ホテル業などは、壊滅的な被害を受けており、また、青年会議所運動に関しても、自粛・中止を余儀なくされ、各々メンバーの生活を支える生業にすら多大なる影響が及んでおります。
この未曾有の事態において、我々青年会議所に求められていることは何でしょうか。
我々にしかできないこと、我々だからこそやらなければならないこととは、一体何なのでしょうか。
<青年会議所(JC)とは>
青年会議所とは、なんだろう。
その答えは、すべて綱領に書かれていると私は思います。JCI日本が設立された9年後の1960年、設立当初506人であった会員数は8,000人となりました。当時の石川会頭が、これから先は創立メンバーがいなくなり、JC運動の本質を伝える人がいなくなるので、JC運動を表現するものが必要だ、として作成されたものが綱領です。
「社会的・国家的・国際的な責任を自覚し」が示すのは、JCの立つべき立場。
「志を同じうする者 相集い 力を合わせ」は、日本におけるJCのあり方。
「青年としての英知と勇気と情熱をもって」は、JCの行動。
そして、「明るい豊かな社会を築き上げよう」は、JCの行動目標。
その綱領のもとに、1967年、私の先輩にあたる現日立第一高校の同窓生を中心に多くの仲間が集まり、チャーターメンバー96人、全国340番目、茨城県内4番目の青年会議所として日立青年会議所は発足されました。それから54年、明るい豊かな社会の実現に向かって、様々な社会問題や地域の課題に取り組み、今日の日立青年会議所の歴史を脈々と築き上げてこられました。2016年、日立青年会議所として50周年を迎えた際、私は実行委員会の副委員長を仰せつかり、日立青年会議所を設立された諸先輩方の偉大さ、諸先輩方が築き上げてこられた50年間の足跡を胸に刻み、その歴史と伝統を継承・進化させていかなければならないと深く感じました。そしてこれからも、このまちに必要とされる存在であり続けるために、未来を見据えた運動を、現役メンバーとともに一致団結して展開していかなければなりません。
<青年会議所(JC)との出会い>
みなさんは、高速道路の上を自分の足で歩いたことがありますか。
私は、高速道路を車で走っている時に、小さい頃この道路の上を歩いた記憶があるが、あれは何の行事だったのだろう?とよく考えていました。広い道路に、何十人何百人という参加者で、車は通行せず人のみが歩いている。地上からかなり高い場所を歩いているので、周りの景色は素晴らしく、心地良い風と共に胸がときめいた記憶が残っています。
これが、私とJCとの出会いであり、JCを通して体験した幼い少年の記憶でした。この高速道路を歩くという滅多にない貴重な体験を計画したのは、1988年、第20代である岩本理事長率いる高萩青年会議所のメンバーだったのです。2018年、高萩青年会議所の50周年記念式典が行われた際、第50代理事長として鈴木淑登理事長が檀上で同様のスピーチをされており、私と同じ経験だと気付き、高萩青年会議所の例会事業だったことに気付かされました。当時私は6歳だったにもかかわらず、ここまで鮮明な記憶に残る衝撃的な体験をさせてもらえたことに、心の底から感謝しています。そして、現在様々な体験をする機会が減っているこのまちの子どもたちへ、そういった場の提供をしていくことが、青年会議所として求められていることなのではないでしょうか。
<このまち(日立)の未来について>
「日の立ち昇るところ領内一」
「日立」の名の由来は、「水戸黄門」として親しまれている水戸藩2代藩主徳川光圀が日立地方を訪れ、海から昇る朝日の美しさに、「日の立ち昇るところ領内一」と称えたという故事に由来すると言われています。そして、日立市は1939年9月1日に市制を施行し、2019年で80周年という節目を経て、新たな一歩を踏み出しております。これまで着実に進めてきた「地方創生」や「安全・安心のまちづくり」に引き続きしっかりと取り組まれながら、さらに「すべての市民が元気に暮らせる“全世代型のまちづくり”」を目指して数々の施策を推進されております。市民の皆様一人ひとりが改めて日立のまちを大切に思う心を育み、これまで築き上げてきた歴史や文化、地域の魅力を再発見し、未来へ継承することで、日立市がより一層の発展を遂げられるよう、我々日立青年会議所としても行政とタッグを強力にして、まちづくりのパートナーとして、共に邁進してまいります。
令和の時代に入り、これまで創り上げられてきたどこにでもあるような画一的なまちの構造から、それぞれの地域が持つ個性を最大限に活かしたまちづくりが必要とされてきています。そのためには、我々JAYCEEが、多面的かつ多角的な広い視野を持って活動し、まちの特性を、まちの個性を十分に理解することが重要です。そして各種団体と協働しながら、地域内外の方々に、よりこのまちに興味を持っていただく仕掛けを打っていかなければなりません。
また、経済のグローバル化が進み、ICTが日進月歩的に発展したことから、インターネットを活用した情報交換ではほとんどコストをかけずに、国や地域をまたぐことに成功しています。こうした情報革命は、金融の流れを加速すると共に、国や地域を越えたビジネスをより容易にしました。今回の新型コロナウイルス感染症においても、自宅でのテレワークが普及したことで、働き方改革が行われた企業が多数あったのではないでしょうか。子どもたちへの教育現場においても、オンライン授業などⅮ](デジタルトランスフォーメーション)の波が大きく押し寄せてきています。しかし、日本の学校のデジタル対応は、世界から20年近く遅れているといわれており、授業中におけるデジタル機器の利用状況はOECD加盟国で最低水準となっております。デジタル技術に対応した人材を育てるためにも学校教育のDXは避けては通れません。我々若い青年が集う青年会議所だからこそ、柔軟な発想力を持って、未来を担う子どもたちのために、ICTを活用した最先端の事業を構築していきましょう。
<次世代のリーダー育成と組織改革について>
青年会議所は、一人ひとりのメンバーが優れたリーダーシップを持つ社会人となるためのトレーニングを行う場所です。法人の定款における目的には、「会員の指導力の啓発」と記載があり、その目的を達成するための事業には、「会員の個人的修練及び能力の開発を利する事業」と記載があります。つまり、「修練・奉仕・友情」の三信条のもと、メンバー一人ひとりが⾃分以外のひとやまちに何らかの変化を与えるには、まず、⾃分⾃⾝をより高く深い認識や理解に導くことが必要なのです。青年会議所には、そのための手法が沢山散りばめられています。例えば出向制度です。日本青年会議所へどんどん出向しましょう。私は2回出向させていただき、かけがえのない経験をさせてもらいました。田舎である茨城県ではなかなか出会えないであろう人材との出会いや、そのメンバー達と共に作り上げていく事業の精度・スピード・発想力、どれをとっても一級品でした。2014年のサマーコンファレンスにおいて当時の安倍総理をお招きする際の首相官邸とのやり取りなど、全てが刺激的で勉強になることばかりでした。会社の売上や従業員規模などは違えども、同じ一JAYCEEとして、同志として、気軽に接してもらえる魔法のJCバッジです。フル活用しない手はありません。
⻘年会議所には、相互成⻑機関として、⾄るところに意識変⾰を図る機会が溢れています。この機会というのは、偶発的に⼿に⼊る「Chance」ではなく、⾃らが掴みに⾏く「Opportunity」であり、⾃らがその機会を掴みに⾏けば、必ず成⻑があるのが⻘年会議所です。⻘年会議所で得られる全ての機会を逃すことなく活動すれば、その成⻑は周りの⼈々に影響を与え、家族を変え、会社を変え、やがては、このまちの未来を変える⼒となるはずです。
次に、組織改革についてですが、株式会社における社外取締役のイメージで、外部監事を完全外部から迎え入れて、組織のブラッシュアップを図ります。また、拡大委員会に所属した仮入会者が、アカデミー委員会への自動継続システムを緩和します。残り年数が短いメンバーの活躍の場を広げることと、実力や経験があるメンバーにおいての理事メンバーとしての即戦力化を目的としています。さらに、昔ながらの慣習で、その目的が現代にそぐわない部分に関しては、新たな手法を導入していきます。理事会なども、原則顔を合わせての会議体でありましたが、コロナ禍における3密回避により遠隔リモート会議も2020年に成功しております。54年前の創始の精神を忘れることなく、常に変化を恐れずに何事にも挑戦してまいりましょう。
すべてのメンバーが主体性をもって課題と向き合い、自分の力で答えを導き出して最速で行動を起こせる人材の育成が急務だと考えます。
<会員拡大について>
毎年毎年新しい理事長が誕生し、それぞれの思いのもと、所信が公表されています。単年度制であるが故に、内容も考え方も様々なベクトルで表現されていますが、唯一共通して毎回書かれていることがあります。それは会員拡大についてです。単年度制でありながら、継続案件の最重要テーマということになります。
日立青年会議所の会員数は、96人でスタートし、1993年128人で最大となり、ここ数年は過去最低の40人台を推移しています。在籍メンバーの平均年齢については、20年前の2000年において35.07歳、2019年は34.39歳とほぼ変化がありません。増加数(拡大数)に対して、減少数(卒業数+退会数)が多いので、会員数が減少している現状です。2000年からの10年間の減少数平均は13.9人、2010年からの10年間の減少数平均は13.5人。つまり、毎年14人の増加数がなければ、会員減少に歯止めをかけることができません。
社会動態が日々変化し、若者の価値観、ライフスタイルやビジネスモデルも変化し続けています。そして、我々青年会議所を取り巻く環境も大きく変化しています。全国的にも青年会議所のメンバー・LOM数は減少し、サードプレイスの選択肢も広がっています。今や社会変革や地域貢献の選択肢は、青年会議所“しか”ない時代から、青年会議所“も”ある時代になっています。そのような社会変動の中で、青年会議所が社会に求められ、青年に社会変革団体として選ばれ続ける持続可能な組織としてあるためには、柔軟で開放的な組織へと進化させる必要があります。曖昧な現状把握ではなく、解決すべき課題を明確にし、無駄なく・効率的に解決する必要があります。さらに、その事業を含めた全てにおいての情報の発信は言うまでもありません。情報量が膨大になっている現代において、取捨選択が繰り返され、効果的な情報伝達方法が見つかっておりません。新聞・広報誌・SNS・HP、より効果的な発信方法についても、模索し進化させ続けていきましょう。
<おわりに>
失敗とは成功する途中過程であり、最後まであきらめなければ、必ず成功します。
アフターコロナ・ウィズコロナにおける地域復興へ向けて、いまこそ愛するこのまち日立のために、日立市内各種団体がワンチームとなり総力を結集し、英知と勇気と情熱をもって、明るい豊かな社会を築き上げましょう。
40歳までという限られた時間だからこそ、そこに全力で投資ができる、プライオリティを高めることができるのです。神逸気旺の心意気で、己の信念を強く持って、最速で行動してまいりましょう。
「できるかできないかじゃない、やるんだよ。」
2021年度、一般社団法人日立青年会議所の活動が、皆様にとって実り多きものとなるよう、事業を展開してまいります。皆様のご支援ご協力を何卒宜しくお願い致します。