2020年度 理事長所信

 

理事長 鈴木 將嗣
 


[はじめに]
 青年会議所とはいったい何だろう?青年会議所とはどういう団体なのだろう?青年会議所運動とは何のために、誰のためにやっているのだろう?2012年に日立青年会議所に入会して以来、私はそれについて考え、悩み、仲間と語り合い、何とか答えをみつけようとしてきたような気がします。明確な答えはまだ見つけられていませんが、それはきっと人によって、その時々によって様々な答えがあり、揺るぎない一つの答えというものはおそらくないのでしょう。各個人が、それぞれの理由で、それぞれの考えを持って活動することのできるところが、青年会議所の魅力、面白さであり、懐の深さだといえるでしょう。
 ですが、ある意味で青年会議所という組織は不自由で効率が悪く、即効性のない、遠回りな、見る人によっては時代遅れとさえ言われかねない団体なのかもしれません。40歳までの、もしかしたら人生の中で一番忙しいといっていい時期に、貴重な時間を使って会議や懇親会を繰り返し、このまちのために活動するなんて、はたから見れば愚鈍にうつるかもしれません。
  青年会議所運動なんて余裕のある人が余裕のある時にやればいいじゃないか、そんな声も聞こえてくるかもしれません。でも本当にそうでしょうか?2014年の全国大会松山大会で卒業生スピーチをされた、小田原青年会議所の古川先輩のお話の中で、今でも印象に残っている言葉があります。それは「まちづくりは世のため人のためにやってるんじゃない、自分自身のためにやるんだ」という言葉です。
  青年会議所運動は世のため人のための前に、何よりもまずは自分自身のためでもあるはずです。このまちで仕事をし、お客さんもこのまちにいて、自分もこのまちで暮らし、子供たちもこのまちの学校に通う、そんなまちと自分とを切り離して考えることなど果たしてできるでしょうか?このまちがなくなれば、自分の家も仕事もなくなってしまうのです。黙っていても、このまちを誰かがよくしてくれますか?誰かって政治家ですか?行政ですか?他の団体ですか?そうじゃないですよね。私たちがまず自分自身のために、そして、このまちのために活動しなければならないのではないでしょうか。



[会員拡大について]
 青年会議所運動は、当時のこのまちの青年たち、我々の先輩方が、自主的に始め、自分たちの会費で今日まで運営してきたものです。誰かから強制されたわけでも依頼されたわけでもなく、いわば勝手に始めた活動が、やがてまちの人びとから必要とされ、信頼されるようになり、その活動は連綿と受け継がれ、今日まで継続してきました。53年間という長い間、この地において脈々と引き継がれてきたこの日立青年会議所の歴史と伝統をしっかりと受け継ぎ、これからの時代へとつないでいく使命と責任が、私たちにはあるはずです。
  40歳で卒業という制度がある以上、何もしなければ毎年会員の数は減っていき、やがてはゼロになってしまいます。また、会員の数が今よりも減っていけば、今よりもさらに会員の拡大は難しくなっていくでしょう。数は力です。我々の活動に共感し、真剣にこのまちのことを考える新しい仲間を一人でも多く積極的に迎え入れ、より多くの仲間と共に活動する必要があります。
  そのためにはまず、私たち自身が青年会議所について深く知り、学び、自分のこれまでの青年会議所での活動を振り返り、これまでに得た経験や学びを改めて見つめ直し、会の魅力や入会で得られるメリットを語ることができるようにならなければなりません。会員一人ひとりが自信を持って青年会議所の魅力を語り、新しい仲間を一人でも多く増やすことができるように、全員で会員拡大運動に取り組んでいきましょう。



[青年会議所を通じた成長]
 青年会議所には年齢も職種も仕事の規模も違う多種多様な会員が在籍しており、明るい豊かな社会を実現するという大きな目標は同じでも、それぞれ様々な考えや意見を持っています。みんなそれぞれ会社や組織の先頭に立ち、意地とプライドを持って仕事をしている人ばかりですから、時には意見や考え方の違いからぶつかり合うこともあるかもしれません。立場や環境の違う人間が共に活動しながら、友情を育むことができるのが青年会議所の魅力の一つですが、その友情は、青年会議所のルールの中で、ルールを守って活動することで初めて生まれるものです。たとえばスポーツの試合において、ラフプレーばかりの相手をリスペクトできないのと同じで、まずは決められたルールをお互いに尊重しあって活動することが大切です。
 そのためにはまずルールを知らなければなりません。青年会議所運動は、やはりその名の通り会議がすべての中心です。各種会議を経て、最終的に理事会議にて審議可決したものしか基本的には認められません。声の大きな人がいくら騒いでも、会議を通さなければその事業を行うことはできません。
  最近は入会して5年程度で卒業していく会員の割合が多く、会議の進行方法や会のしきたりをようやく覚えたところで卒業となってしまう傾向があります。たとえ年数は少なくても、その中で会議や委員会の運営方法、各役職の役割、青年会議所のしきたりをしっかりと受け継ぎ、次の世代に引き継いでいくことが重要です。
  青年会議所には自己成長のための多くの機会、研修の場が用意されています。それらに積極的に、真剣に参加すれば、多くの学びと気付きが得られるはずです。しかし、例会や理事会、委員会などで集まって、ただ面白おかしく仲良くつるんでいても本当の友情は生まれないのではないでしょうか。青年会議所という枠組みの中で、お互いがルールにのっとって真剣に意見を戦わせ、切磋琢磨していくことが、真の友情を育み、自分たちを成長させるのです。自分たちの成長が、この地域の成長につながると信じて、日々の活動に真剣に取り組んでまいりましょう。



[地域を愛する次世代の育成]
  移動手段の発達、インターネットの普及などにより、世界の距離は昔よりもぐっと縮まり、グローバルや国際化という言葉がもてはやされた時代がありました。しかし、グローバル化の流れにも綻びが生じ、トランプ政権の誕生やイギリスのEU離脱の問題、各国でのナショナリズムの高揚など、グローバリズムとナショナリズムの対立が世界各地で生まれています。

  こんな時代だからこそ子供たちには、まず自分が生まれた地域や国のことをよく知ってもらいたい。自分自身のことを認められない、愛することのできない人間が、他人を愛することなどできないのと同じように、自分の生まれ育った家庭や地域、国のことをよく知らない、誇りに思えない人間が、他の地域や国の人のことを尊重できるはずがないからです。
  まずは自分の住み暮らす地域の歴史や良さを知ってもらい、都会にはない、地方には地方の良さがあることを感じていただきたい。足りないものを数え上げればきりがないので、足りないものを嘆くよりも、今あるものをどうしていくか、どのように活用するかを考えてもらいたい。このまちに住む子供たちが、この地域に魅力と誇りを感じ、明るい未来を思い描くことができるような、そんな機会を創出していきます。
  また、青年会議所はビジネスではありません。収益を上げる必要のない事業を行うことができるということは一つの強みです。数字は目標や結果としてはわかりやすく、それをすべて否定するわけではありませんが、目先の数字や利益、わかりやすい効果の検証にとらわれすぎない事業を行っていきます。
  何百人、何千人規模の事業ももちろん素晴らしいですが、たとえ50人100人規模の事業だとしても、その事業に参加した1人でも2人でも心に本当に響くものがあったとしたら、その事業にも価値があるといえるはずです。
  もしかしたら芽は出ないかもしれないが、数年後、数十年後のために、あきらめずに種を蒔き続けるような、そんな事業を行っていきます。



[おわりに]
  早いもので私が日立青年会議所に入会して7年の月日が経とうとしています。青年会議所を通じて様々な出会いがあり、多くのことを学ばせていただきました。今思うことは、青年会議所運動は決して悪いものではなく、この地域や子供たちにとって価値のある素晴らしい活動だということです。そして青年会議所運動に一生懸命に取り組めば取り組んだだけ、多くの学びと気付きがあり、その経験は自分にとってかけがえのないもの、尊いものになると断言できます。しかし、こうして青年会議所運動に取り組むことができているのも、家族や会社、周りの人びとの支えがあってこそのものであり、活動ができていることに対して感謝の心を忘れてはならないと思います。その気持ちがあれば、家族や会社、周りの人びとに対して恥ずかしい活動はできないはずです。せっかく時間とお金を使って活動するのですから、家族や会社や周りの人びとに恥ずかしくない、胸をはって誇れる活動をしていきましょう。
  また、青年会議所はいい意味で少しカッコつけている団体です。少し無理をしても、たとえ辛いことや苦しいことがあってもそれは表に出さずに、青年会議所に出てきたときには少しだけカッコつけて活動していきましょう。
  これまでのこのまちの物語を受け継ぎ、次世代の子供たちへ継承していくのは私たち青年の役割であり、責任でもあります。これから私たち青年がこのまちの先頭に立ち、次の世代の子供たちのために、このまちの明るい未来の物語を紡いでいきましょう。